ブドウの香りに満たされて…4

また、大井上康著『葡萄の研究』(養賢堂・昭一二再版)には

「……果粉と果皮色を併せ遠望せる色沢は正にモーブ色に近し」とある。

モーブとは金綱ゆき子先生の説明を拝借すれば「肌の上においた紫水晶の色」(『すぐ役に立つ配色講座』主婦の友社・昭三一)である。

肌はもちろん、ぼくのではない。

ご婦人の肌である。

ぼくはこの説明がことのほか気に入っている。

甲州の花 種の果皮の色は、朝、昼、夕方によって違う。

そしてまた、おてんとさまの当たり加減によっても微妙な変化を見せる。

ブドウの持つ色の誘惑、そんな気さえする。

甲州と、甲斐の国、上岩崎村の村人たちとの巡り合いは、いい伝えによると文治二年春のことであった。

文治二年とは平氏が滅びた翌年である。

以来、甲州の紅の色は、日本のブドウの基準色となっている。

ブドウの女王、マスカット・オブ・アレキサソドリアは、強い芳香を出す。

専門用語でマスカット香という。

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